生物におけるメラニズム(体表、毛先に至るまでメラニンの作用により黒くなること)は主に、体温調節、夜間における迷彩、寄生虫耐性、時には捕食者から身を守るすべとして用いられる。
これらは野生生物の中でメラニズムが淘汰されることなく今日まで受け継がれてきたのはそういった点で有利だからだと考えられてきた。
しかし12月18日に発表された「plos one」に掲載された記事によると野生のネコにおけるメラニズムに欠陥が見つかったようだ。
サンタカタリーナ連邦大学の生態学者マウリシオ・グライペル氏は通常、野生の猫には耳の後ろと尻尾の後ろに白い模様が存在する。この白い模様はネコがコミュニケーションをするときなどに用いるとされている。だがメラニズムの個体にはその模様がない。
したがって黒いネコは他の個体とのコミュニケーションが取りづらいのではないかといった仮説を立てた。

通常の個体は仲間同士で危険信号などのコミュニケーションが取れるが、体温調節や捕食者に襲撃されると言った恐れがある。
一方メラニズムの個体は、体温調節や捕食者に襲撃されにくいと言った点で有利だが、仲間同士でのコミュニケーションが取れないと言った欠点がある。(ネコは目がいいので夜間でも獲物や仲間を見分けられる)
(野生の猫は)このような進化におけるジレンマ とも言える問題を抱えている。
結局の所メラニズムは長所なのか、短所なのか。この問題の答えは簡単に出すことはできない。
同氏の研究によると月明かりのある夜は通常の斑点のある個体が活動的になるのに対し、月明かりのない夜はメラニズムの個体が活動的になることがわかっている。
また生息地や群れごとによってもメラニズムの割合が異なっている。サバンナなどで昼夜を問わず狩りをする種はメラニズムの割合が極めて低いのに対し、ジャングルなどに棲み、主に日中に活動する種はメラニズムの割合が全体の50%にもなるという。(ジャングルなどではコミュニケーションを取ることは必ずしも生存に必要ではないとされる)
この研究は野生のネコにおけるメラニズムの視覚コミュニケーションの重要性を示し、哺乳類の進化に関する研究への新しい道を切り開きます。
creditnational geographic creditPLOS ONE一部編集