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【意外と身近】日常で見られる心理現象10選

 私たち人間には「心」があり、その「心」に多くの人が振り回されている。心理学はそんな「心」の謎を探求する学問である。仕事、恋愛、テレビで流れるコマーシャル、心理学は日常の、それもかなり身近な場面でも活用されている。

今回は、そんな日常生活で使用されている心理的効果を10個ほど紹介する。なお、ここで取り扱うのはいわゆる「通俗心理学」であり、厳密な心理学ではないことに注意していただきたい。

ウィンザー効果

 本人から直接発信された情報よりも、利害関係のない第三者を介した情報のほうが信頼を勝ち取りやすい心理的傾向を『ウィンザー効果』という。

作家、アーリーン・ロマノネスの著書「伯爵夫人はスパイ」に登場するウィンザー夫人のセリフ、「第三者からの誉め言葉がどんな時でも一番有効なのよ」が名前の由来とされている。

たとえば、

 ・「私はあなたのことが心配で気にかけているんだ。」

 ・「となりの部署の課長があなたのことを気にかけていたよ。」

この2つは同じことを言っているが受け手の印象がまるで違う。

前者では押しつけがましいような感覚を覚え、本当にこちらを思って言っているのか訝しんでしまう。しかし、後者は、自分に嘘をつく必要のない人物からの情報のため、素直に受け止めることができるのである。

ウィンザー効果はマーケティングに頻繁に活用されており、SNSなどの口コミやレビューなどがこれにあたる。いいね数や反応が多いと、人間の周囲の人々にあわせて行動を決定する「群衆効果」も働き、さらに効果的となる。

アンダーマイニング効果

 最初はただ楽しいからやっていた行為が、報酬を支払われるようになると目的がすり替わり、いつしか報酬を得ることが目的となる……。このような心理効果を『アンダーマイニング効果』という。

この現象に関する有名な実験がある。マーク・レッパー(Mark R. Lepper)とエドワード・デシ(Edward L. Deci)がおこなった、大学生を対象としたソマパズルを解く実験だ。ソマパズルとは7つの立体的なブロックを組み合わせて、様々な形をつくるパズルのことだ。

大学生は2つのグループに分けられ、3回にわたってパズルを解き、その意欲を観察した。なお、ひとつのセクションは8分間に区切られ、その間は自由にしていいと学生に伝達されている。

1.それぞれのグループにパズルを解いてもらう(報酬なし)

2,再度パズルを解いてもらう。この際に片方のグループには報酬を与え、もう片方のグループにはなにも与えず、なにも告げない

3,1回目と同じ。それぞれのグループにパズルを解いてもらう(報酬なし)

実験の結果、報酬を与えらていないグループは、ソマパズルに取り組む時間が変化しなかった。一方で、報酬を与えられたグループには取り組む時間の低下がみられた。これは報酬が与えられたことでソマパズルを解く行為が「報酬を得るための手段」に成り下がったためだと考えられている。

この実験からわかるように、アンダーマイニング効果の注意すべき弊害は「モチベーションの低下」である。

アンダーマイニング効果を回避するためには、物質的な報酬を期待させるのではなく、行為や能力に対して言語的な称賛を送ることが望ましいとされている。結果ではなく、そこに至るまでの過程を評価することで自発的行動を促すのである。これはアンダーマイニング効果の逆、「エンハンシング効果」と呼ばれている。

しかし、「賞金を目当てに努力する」や「報酬があるから頑張っている」場合もあるように、報酬への期待が一概に悪いわけではない。

ツァイガルニック効果

 中途半端で終えられたもののほうが、完成したものよりも記憶に残りやすい心理効果は『ツァイガルニック効果』と呼ばれている。

仕事や物事が一段落したり、区切りの良いところまで進めると、人はすっきりとした気分となり、ほかの物事に関心を向けるようになる。しかし、目標を達成できなかったり、中断、ないしは不完全な状態でほかの物事に向かうと、モヤモヤした感情を抱えたままのぞむことになる。結果として、この感情が反芻されることにより、脳に印象が強く残ることとなるのである。

ツァイガルニック効果が活用されている事例として「テレビ番組」が挙げられる。よく、これからクライマックスを迎える場面で「続きはCMの後」といわれ、おあずけを食らうことがあるだろう。こうすることで、「続きが見たい」と感じさせ、CMがあけるまで番組に関心を集める効果があるとされている。

また、これを利用した勉強法もある。勉強の途中で休憩を入れる際、区切りのいいところではなく、あえてモヤモヤする形で挟むことにより、はやく机に戻れるようにする手法である。うまく利用できれば、より成果をあげることができるかもしれない。

カクテルパーティー効果

 ガヤガヤとした空間の中でも、特定の音や自分に関係のある会話だけ、しっかりと聞き取れる現象を『カクテルパーティー効果』という。

イギリスの認知心理学者コリン・チェリー(Colin Cherry)が提唱した。「音声の選択的取得」、「選択的注意」とも呼ばれている。

会社から帰宅する電車に乗っているとき、最寄り駅のアナウンスはしっかりと聞こえるが、それ以外はあまり気にならなかったり、アナウンスの詳細な内容を覚えていない、といった経験はないだろうか。

与えられた情報をすべて取得しようとすると、処理が追い付かず脳がパンクしてしまう。咄嗟の行動にも支障をきたすかもしれない。そこで、必要な情報以外をシャットアウトし、脳にかかる負担を軽くするための機能と考えられている。しかし、詳しいメカニズムはわかっていない。

カクテルパーティー効果はなにも音声に限った話ではなく、視覚にも同様に働いている。たとえば、合格発表の際には、自分の番号だけ特に目に入るようになる。これは、無意識のうちに脳が情報を取捨選択しているからである。音声情報の選択的取得を『カクテルパーティー効果』と呼び、視覚情報の選択的取得を『カラーバス効果』という。

セルフハンディキャッピング

 仕事や試験の本番前に、失敗しても言い訳をできるように保険を張ったり、実際にマイナスにしかならないような行為を行うことを『セルフハンディキャッピング』という。

アメリカの社会心理学者エドワード・ジョーンズ(Edward E. Jones)が提唱した。

よく挙げられる例に、「テスト勉強中に部屋の掃除をはじめる」がある。これは、たとえテストの結果がかんばしくないものだとしても、「あのときに掃除をしなければもっといい点を取れた…」と、言い訳の余地をのこすことで、自尊心を保つ行為である。また、成功した際には、「あまり勉強してないのにうまくいった!」と、自己評価を高めることができる。

セルフハンディキャッピングは、あくまでも保険をかける行為であり、本質的には意味のない行為である。むしろ、貴重な時間を浪費するだけのマイナスなおこないといえる。

コントラスト効果

 同じものでも、前後の物事と比較することで、受ける印象が大きく変わる心理効果を『コントラスト効果』という。

私たちの脳は、なにかを判断するとき、他のものと比較することでその価値を推しはかろうとする傾向がある。たとえば、1kgの重りを持ってから5kgの重りを持つと、重く感じるだろう。だが、10kgの重りを持ってから5kgの重りを持つと、反対に軽く感じる。

このように、同じものでも周囲との対比によっては180度違った見方ができるのである。

また、

 ・10,000円

 ・15,000円 10,000円

のように、同時に2つのものを提示されても印象が変わる場合がある。この2つを見たあなたは、下段の商品のほうが安く感じるだろう。値段は同じにもかかわらずだ。最初に高い値段を提示しておき、値引きによって相対的に安く感じさせる手法は『アンカリング』と呼ばれており、コントラスト効果とよく併用されている。

ジャネーの法則

 月日の流れは、飛ぶ矢に例えられるほどに早い。年齢を重ねるにつれ、時間がはやく過ぎ去っていくように感じる人もいるだろう。この現象には『ジャネーの法則』という名がつけられている。

フランスの哲学者ポール・ジャネー(Paul Alexandre René Janet)が発案したとされる仮説で、それによると「障害のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する」らしい。

50歳の大人にとっての1年は、それまでの人生の50分の1に過ぎない。しかし、10歳の子供にとってはこれまでの人生の10分の1となる。つまりは、同じ1年でも当人にとっての比率が異なるため、年を重ねるごとにどんどん時間の流れが早く感じるということだ。

『ジャネーの法則』にもとづいて計算すると、心理的に感じる人生の折り返し地点はおよそ20歳で、それ以降は1年が短くなっていく一方のようだ。これは、私たちの記憶が3~5歳ごろから始まっていることを前提としている。仮に生まれた瞬間から時間を知覚しているならば折り返し地点は、およそ10歳となる。

子供のころは見るもの聞くものがすべて真新しく、覚えることもたくさんあるため、一日一日を記憶に刻みながら生活する。しかし、年齢を重ね、新たな発見が減り、仕事場と自宅を往復するような単純な日々が続くと、脳が時間を少なく見積もってしまうとする説が有力視されている。

ただし、詳しいメカニズムはわかっておらず、検証も進んでいないため、いまだに仮説どまりとなっている。

シャルパンティエ効果(シャルパンティエ=コゼレフの錯覚)

 同じ質量をもち、体積のことある2つの物体があった場合、「体積の大きい方が軽い」と見積もってしまう錯覚・心理効果を『シャルパンティエ効果』(またはシャルパンティエ=コゼレフの錯覚)という。

フランスの医師オーグスチン・シャルパンティエが実験をおこない、証拠を提示した。

同じ質量の「鉄」と「わた」を横に並べて比較した場合、体積の大きな「わた」のほうが軽いと考えたり、同じ質量でも数値の大きい方が多いと感じたり、といった現象がこれにあたる。

両方とも同じ重さだが、イメージが先行して判断を誤る。

日常生活の中で人間の脳には、「わた=軽い」「鉄=重い」といったイメージが定着している。この認識が、質量、数値、味などの判断が狂わせているのである。

他にも有名な例を挙げると、

 ・ビタミンC 5g 配合

 ・ビタミンC 5,000mg 配合

がある。両方とも配合量は同じにもかかわらず、下段のほうが配合量が多く感じる。

また、

 ・これ一本で1日分のビタミンC(5,000m配合)

 ・ビタミンC 5.000mg 配合

ならば、イメージしやすい上段の方が、お得感を与えることができる。

ネームレター効果

 自分の名前に似ているものや人に対して、好意的な印象をもつ心理現象を『ネームレター効果』という。人は自分の名前に無意識に愛着をもっているのが原因と考えられている。

特に「イニシャル」に対しては顕著で、アルファベット26文字に対する好感度を直感的に判断してもらうネームレターテスト(NLT)の結果、自分の名前に含まれる文字は好まれやすいことがすでにわかっている。また、自分の名前に含まれる文字が入った商品・ブランドに好感を抱く傾向があるという。

日本人の場合は、アルファベットよりも、その生涯の多くを接する「ひらがな」のほうが潜在的な感情が出やすいと考えられているが、信頼性の問題から、いまだ十分な検証がなされていない。

レイクウォビゴン効果

 特に根拠もないのに、自分は他人よりも優れていて、平均よりも上にいると誤った自己評価を下してしまう心理効果を『レイクウォビゴン効果』という。

名前の由来は、アメリカの作家ギャリソン・キーラーの小説「レイクウォビゴンの人々」の中に登場する架空の町で、「この町の住人はみな容姿端麗で、子供はみな平均以上」な場所として位置づけられている。しかし、常識的に考えてこのようなことがあるはずもない。必ず”平均以下”がどこかにいるはずである。転じて、自分の能力が他よりも優れているとする錯覚の名前として扱われるようになった。

「タバコはいつでも止められる……」「自分だけは風邪をひかない」などがこれにあたる。

また、レイクウォビゴン効果は能力が飛空い人ほど当てはまりやすい傾向にある。これは、能力が低い人ほど、自分を客観的に見ることができない『ダニング・クルーガー効果』や成功したときに必要以上に自己評価をあげる『自己奉仕バイアス』が発生するためだ。

レイクウォビゴン効果を回避するためには、他社の評価を素直に受け入れることが重要とされている。