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【陰謀】なぜ宇宙で撮影された写真に星が写っていないのか

 12月8日、実業家、起業家の前澤友作さんらが搭乗したソユーズロケットが地球を飛び立ち、ISS(国際宇宙ステーション)とのドッキングに成功した。日本の民間人がISSに滞在するのは初で、SNSなどに宇宙旅行を満喫している写真をアップしている。

だが、この写真を見てこんな疑問をもつ方もいるだろう。

「なぜ、背景にあるはずの星がひとつも写っていないの?遮るものがなにもないのだから満点の星空が納められていてもいいんじゃない?」

 この疑問(主張)は、人類初の月面着陸が実際にはウソであったと主張する「アポロ計画陰謀論」でしばしば槍玉に挙げられる。たしかに、アポロ計画では月面に降り立つ宇宙飛行士や着陸船の写真は豊富にあるが、背景に(地球以外の)星が写っているものは皆無といってよい。

しかし、これらは論理的に説明がつく現象であり、無知や勘違いに由来するナンセンスな主張である。

アポロ17号のユージン・サーナン宇宙飛行士。やはり星は写っていない。

「宇宙環境」と「地球環境」には大きな違いがある。まず、宇宙には大気がない。地球には分厚い大気があり、大気を構成する分子や微粒子によって光が散乱される(=レイリー散乱)ため、空全体に色がひろがっている。日中の空が青色にみえたり、夕焼けが赤くみえるのはレイリー散乱によるものだ。

しかし、宇宙空間の場合、大気がほとんどないため散乱するための障害物がなく、光がまっすぐに突き抜けてしまう。レイリー散乱は起こらず、空の色はつねに暗いまま。したがって、たとえば月面では、昼間であろうとも、空を見上げれば満点の星空が広がっているはずである。

では、なぜ星が写っていないのか。その理由は「露出アンダーとなり、”黒つぶれ”しているから」。

黒つぶれとは、写真撮影において、明るい部分にあわせて露出(撮影の際にとりこむ光の量)を絞った結果、影の部分の諧調が失われ、黒一色になることを指す。一口に影と言っても肉眼で見れば濃淡やわずかな光などが確認できる。しかし、センサーの限界を下回ると、そうした色の機微が処理できなくなるのである。逆に暗い部分にあわせて露出を増やすと、明るい部分の諧調が失われ、白一色になってしまう。この現象は「白飛び」と呼ばれている。

要は、明暗が激しいシーンを撮影するとき、明るい被写体にあわせると「黒つぶれ」に、暗い被写体にあわせると「白飛び」になってしまうのだ。これと同じことが宇宙でも起きている。先のアポロ17号の写真を具体例に示す。

撮影時、月面にとどく光の量は地球上の朝と同じであったと言われている。。第一に、月面のほぼすべてを覆っているレゴリスは、入ってきた光を強く反射する性質がある。アポロ17号の船外活動がおこなわれたのはすべて早朝から午前中だったため、月の表面はレフ版のような役割をはたしたことだろう。宇宙飛行士の服も白いため、同様に光を反射する。

このような状況において、宇宙飛行士を鮮明に写すには、シャッタースピードを速めに設定しておかなければならない。また、露出を抑えて、レンズに入る光を制限する必要がある。薄暗い星の光は、記録されるだけの露出を確保できない。つまりは、明るい宇宙飛行士に露出を合わせた結果、弱すぎる星の光が黒つぶれによって見えなくなっただけなのだ

むしろ星が鮮明に写っているほうが不自然だ。黒つぶれしていることが、宇宙で撮影したことの証拠となっていると言えるかもしれない。

余談だが、宇宙飛行士が白飛びをすることを許容すれば、月面から星を撮影することは可能だったと考えられている。作家兼脚本家のS G Collins氏は、星にあわせて露出を増やした場合、どのようなことが起こるのかを再現している(3:12~)。

前沢氏の写真の背景に星が写っていないこともこれと同じ原理だ。明るい地球とISSに絞りをあわせた結果、星が写るほどの露出を確保できなかったのだろう。

まとめると、宇宙で撮られた写真に星が写りこんでいないのは、単に露出の問題であって、NASAの陰謀だとか、本当は宇宙に行っていないとか、そういったことは関係ないのである。