Electigmaについて

宇宙の終末として想定される3つの未来

宇宙には始まりがあり、今なお膨張し続けている。」これらのことが理解されるようになったのは20世紀の初めになり遠方の銀河のスペクトルが観測されるようになってからでした。人類史で見てもつい最近のことです。

この説が多くの天文学者に支持されるようになって以来、「宇宙の始まりと終わり」は天文学的な命題となり様々な学術的仮説が生まれました。

宇宙の始まりの最有力候補は、高温高密度の小さな”火の玉”が膨張とともに低温低密度となったとする「ビッグバン宇宙論」です。

では宇宙の終わり、すなわち進化しつづけた先に訪れる結末はどのようなものなのか。宇宙の終焉に関する仮説は大まかに分けて3つあります。

宇宙の膨張は止まらず、無限に近い時間をかけてほぼ絶対零度になる説。

膨張しすぎた結果、宇宙全体が引き裂かれる説。

あるポイントから宇宙が収縮し始め、やがて点に戻る説。

遥か未来の宇宙は一体どうなってしまうのでしょうか。

ダークエネルギーが左右する終末

宇宙の最後を語る前にこの問題のカギを握るダークエネルギーについて説明します。

20世紀に得られた新たな認識から宇宙全体が膨張しており、さらにその膨張速度が「加速」しているという驚くべき事実が明らかになりました。なぜ驚くべきかというと、それ以前は万有引力を及ぼしあう通常の物質しかない宇宙はそれらの重力により減速膨張に転ずると考えられていたためです。宇宙の膨張が加速しているということは「宇宙空間には通常の物質とは違う見えない『何か』で満ちており、それが空間を押し広げている。」ことを意味します。

この現象を説明するためには、宇宙がどれだけ膨張しても密度が変化しないようなエネルギーが宇宙の大半を占めていなければなりません。研究者たちはこの仮想エネルギーをダークエネルギー(暗黒エネルギー)と名付けました。

宇宙最大の力であるダークエネルギーは我々の理解を超えた性質を持っています。ダークエネルギーと便宜上の名前が付けられていますが、エネルギーなのか物質なのか、あるいはもっと別な何かなのかすらも分かっていません。

ダークエネルギーは現代の物理学界における重要な謎なのです。

今回問題となるのは、空間が膨張する過程でダークエネルギーの密度が一定であるかどうかです。

現在、ダークエネルギーはどれだけ空間が膨張しても性質、密度が変化しないと考えられていますが、一定であることを証明することは極めて困難です。もしかしたら「膨張ともに少しずつ密度が濃くなっている」のかもしれません。あるいは「一定に見えて徐々に薄くなっている」パターンも考えられます。

それによって宇宙の終末シナリオも変わってくるのです。

シナリオ1.何もない空っぽの宇宙「ビッグフリーズ」

まずは「ダークエネルギーの密度が今後も一定だった場合」を見てみましょう。つまり、膨張速度がこれ以上増加しなかったケースです。

この場合、宇宙は永遠に膨張を続けます

銀河を形成する星々はお互いに離れ離れになり、恒星系はちりぢりになり、広い宇宙の中にちらほらと天体が存在するだけの空間が出来上がるでしょう。

こうしてちりぢりになった星も陽子の崩壊とともに壊れていき、ブラックホールもホーキング放射を伴って蒸発。そうして空っぽになった空間には光子やニュートリノなどが飛びかう絶対零度の空間となるのです。

この最終的な状態を「ビッグフリーズ」あるいは「コールドデス」などといいます。

宇宙の最終的な状態に関しては観測データによって大きく変化しますが、現在は「ビッグ・フリーズ」が最有力候補として考えられています。

すべてが引き裂かれる「ビッグリップ」

次に「ダークエネルギーの密度が濃くなった場合」を見ていきましょう。この仮説ではダークエネルギーは「クインテッセンス」(Quintessence)の一種だと考えます。

クインテッセンスとは、1998年に物理学者らが宇宙の加速膨張を説明するために仮定した概念で、時間とともに増加する可能性があります。「ファントムエネルギー」などとも呼ばれています。

宇宙でダークエネルギーが優勢になるということは、宇宙が広がる速度のさらなる増加を意味します。膨張速度は指数関数的に広がり、やがて光速度に達し、宇宙の大きさは「無限大」に拡散します。

現在の宇宙は4つの力(重力、電磁気力、弱い力、強い力)で構成されています。天体が形を保っていられるのは重力のおかげですし、原子核と電子を結び付けているのも電磁気力です。

しかし、ダークエネルギーの力が強くなりすぎるとそれらを引きはがそうとする力が勝るようになります。天体同士は引き裂かれ、原子も安定に存在できなくなります。

ついには超高密度とかしたダークエネルギーに空間が引き裂かれてしまうのです。この現象を「ビッグリップ」といいます。なんともあっけない終焉です。

ですが、現在までにダークエネルギーの密度増加の兆候が見られないことから、この説は多くの学者から否定的な目で見られています。あくまでも理論的な可能性の一つというわけです。

再び1点に収束する「ビッグクランチ」

最後に「ダークエネルギーの密度が薄くなった」場合を見てみましょう。

先にも述べたように、ダークエネルギーの正体は謎に包まれています。永久に形態を変えないエネルギーかもしれませんし、大統一理論の予言に従い崩壊する物質かもしれません。

仮に一気にダークエネルギーの密度が減少するような事態が発生した場合、宇宙の支配権は重力に移ります。それまで膨張していた宇宙は一転して収縮し始め、銀河はお互いに溶けあっていくでしょう。

やがて宇宙マイクロ背景放射(CMB)の熱で宇宙全体が星を溶かすほどに熱くなり、内と外の両方から天体が崩壊し始めます。そうして最終的に、すべてのブラックホールが合体した超巨大ブラックホールと特異点の中の量子情報しかない宇宙は高温高密度の小さな点となるのです。

これが「ビッグクランチ」です。広大な宇宙が再びビッグバン以前の状態に戻るなんて考えられませんよね。

さて、このビッグクランチですが1点に収縮したのちに再びビッグバンにより膨張に転ずるという説があります。端的に言えば、わたし達の宇宙がたどったような発展をもう一度遂げるかもしれない、ということです。この理論を「ビッグバウンス」といいます。

しかし、その先に出来上がった宇宙はわたし達の知る宇宙とは全く違うものである可能性が高く、新たな知的生命体がわたし達の残した痕跡を発見することはまずないでしょう。

最後に

宇宙の謎を解くピースは依然として不足しています。

数十年前まで、宇宙を構成しているものはわたし達の身の回りに存在する「普通」の物質だと思われていたものが全体の5%にしかすぎず、残りの95%が正体不明のダークマターとダークエネルギーで満たされていることが最近になって認知されるようになりました。

何もない空間にある『何か』を私たちが感じ取ることができませんが、その『何か』が宇宙を支配し、膨張を加速させていることは少なくとも観測的には事実のようです。今のところ有力視されているのはビッグフリーズですが、答えは誰にもわかりません。

好きなシナリオを信じて終末を迎えるといいでしょう。

幸いなことに、有力視されているビッグフリーズの状態になるのは今から10100(1グーゴル)年後のことですので、まだまだ時間があります。では、よい一日を!

参照文献

・『60分でわかる 宇宙の終わり』 Newton増刊vol.7

https://books.rakuten.co.jp/rb/16728873/?l-id=search-c-item-text-01

・『輪廻する宇宙-ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来-』 横山順一(2015年、ブルーバックス)

https://books.rakuten.co.jp/rk/de961b614db83d57b996560cdc59e18c/?l-id=search-all-non-again