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ブラックホール誕生の瞬間、最もエネルギッシュな爆発が既存の理論に異を唱える

ガンマ線バーストをイメージしたアーティスト画像。©DESY, Science Communication Lab

多数の大学が参加した国際的な研究チームは6月4日、学術雑誌『Science』で10億光年以上離れた場所で最高のエネルギー放射と最長のガンマ線バースト残光を観測したことを発表しました

今回の観測はブラックホールがどのようにして産声をあげるのか、またそれに付随するジェットのメカニズムを解明する重要な機会となります。

・研究報告 : Science | Revealing x-ray and gamma ray temporal and spectral similarities in the GRB 190829A afterglow |

・Reference : iflscience / MailOnline / Desy,Science Communication Lab

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最前線から見たガンマ線バースト

ガンマ線バーストとは、太陽がその一生をかけて解放する莫大なエネルギーを数ミリ秒から数百秒のうちにガンマ線として放出する宇宙最大の天体現象です。

大質量星の崩壊に関与しており、中心核が中性子性またはブラックホールを形成する際に、解放された重力エネルギーの一部が光速に近い速度のジェットを生成していると一般的に考えられています。

放射は2段階に分かれており、最初の数秒ではガンマ線の閃光が放出され、そのあとより長い波長(紫外線、X線など)が緩やかに消えていく残光が見られます。

しかし、ガンマ線バーストは未だに多くの謎を残しており、本当にエネルギーを放射線に変換しているのか、変換しているとしたらどのようなプロセスを経由しているのかなどは不明となっています。

2019年8月29日、巨星が崩壊したことによるガンマ線バーストをフェルミγ線宇宙望遠鏡スウィフト宇宙望遠鏡が検出。その後、高エネルギーのガンマ線を観測する『ハイ・エナジー・ステレオスコープ・システム(HESS)』が残光を追随しました。この天体はGBR 190829 Aとナンバリングされました。

今回の発見を特別にしているのは、地球から10億光年という比較的近い場所でのイベントだったことです。ガンマ線バーストは平均して200億光年離れた場所で発生しており、このガンマ線バーストは地球から最も近いものとなっています。

数日間の観測の結果、このイベントに関する驚くべき観測的事実が2つ得られました。

1つは、複数日にわたって高エネルギーガンマ線の光度曲線が検出されたこと。

2つめは、0.18~3.3 TeVという可視光の1兆倍のエネルギーをもつガンマ線スペクトルを正確に決定できたことです。

これらの知見により、チームは残光から発されるX線と超高エネルギーのガンマ線との間に奇妙な共通点を見出しました

理論的には、この2つの閃光は異なるメカニズムで発生していると考えられています。地球上の粒子加速器(シンクロトロン)もこの考えに基づいています。

現在の知見では、たとえ宇宙でもっとも強力な爆発であっても超高エネルギーのガンマ線を直接発生させるほど電子を加速させることはできないと言われています。

しかし、これらの結果は高エネルギーのガンマ線と残光に含まれるX線が同じ起源から生成されたことを示唆しています。標準モデルでは説明のつかないことです。

GBR 190829 Aが示した可能性はガンマ線バーストのさらなる研究の必要性を訴えかけています。

例えば、バーストが放つ莫大なエネルギーはクェーサーや超新星爆発などと比較しても引けを取らないことからブラックホールに関連する『ジェット』とも深い関係があるのではないかと考えられています。

こういった現代科学をもってしてもよく分かっていない現象についても観測を重ねていくうちに確実に解明へと進んでいくでしょう。

また、検出から観測までをよりスムーズにすることでより長くガンマ線バーストを観測する試みも行われており、チリ・アンデス山脈とカナリア諸島・ラ・パルマ島に設けられた次世代型ガンマ線望遠鏡『チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)』の活躍が期待されています。。