Electigmaについて

クマムシは拳銃弾より高速で打ち出されても生き残れることが判明!ただしそれ以上は無理。

”地球上最強生物”としてしばしば取りざたされるクマムシ。地球の生物種とは思えないほど極限環境へ耐性をもつこの生物は数々の伝説を作り上げてきました。「月面に残された個体がまだ生きている」なんて話もあるくらいです。

ところが、流石に完璧な生命ではなかったようです。

5月11日に学術誌『Astrobiology』に掲載された研究論文によると、クマムシは秒速約728m(9mm弾の1.9倍)で目標に衝突しても生き残ったことが報告されました。しかし、これより高速での衝突には耐え切れず粉々になってしまったそうです。

・研究報告 : Astrobiology | Tardigrade Survival Limits in High-Speed Impacts—Implications for Panspermia and Collection of Samples from Plumes Emitted by Ice Worlds | Alejandra Traspas and Mark J. Burchell.2021.

・Reference : newAtlas/sciencenews

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クマムシの恐るべき能力

クマムシは非常にタフなことで知られる小さな生き物です。”ムシ”とついているため昆虫と誤解されますが正確には4対8本の足をもつ緩歩動物に分類されます。ジャングルから南極、高山から海底まであらゆる場所に生息しており、陸上種の多くは藻類やコケの隙間に棲んでいます。

このミクロの生き物がここまで注目されるのは、ある能力が備わっているからです。

クマムシは陸生の種も含めて基本的に水中に生息しています。裏を返せば周囲に水分がないと生きていけません。

では周囲が乾燥し始めたならばどうするのでしょうか。通常の生物ならば移動するなり、なすすべなく死滅したりするでしょう。ですがクマムシは違います。

乾燥した環境にさらされたクマムシは「乾眠」と呼ばれる脱水し丸まった休眠状態に移行し、代謝をゼロにすることで生存に適した環境になるまで生き延びる能力を持っているのです。

この状態のクマムシは絶大な耐久力を発揮します。100℃からほぼ絶対零度までの温度、75,000気圧の圧力、高い放射線への抵抗力、宇宙空間への10日間にわたる暴露にも耐えきりました。

このような常識では考えられない能力を持つクマムシは、地球最初の生命は他天体から飛来したとするパンスペルミア説(panspermia)の候補として考えられてきました。

要するに隕石衝突の衝撃を耐え抜き、この地に根を下ろした最初の生命体はエイリアンで、それがクマムシだとする説です。

そこで、ケント大学の研究チームは小惑星衝突の衝撃圧にどの程度耐えきれるのかを検証するためにクマムシを銃で発射することにしました。

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クマムシの運命やいかに

研究チームはまず20匹のクマムシに食料と水を与えて48時間冷凍し、仮死状態にしました。その後、2,3匹のクマムシを1セットとしてナイロン製の容器に水と一緒に入れ、二段式ライトガスガンと呼ばれる大砲のような銃で砂地に向けて発射したのです。

この際、秒速約550〜1,000mの速度で発射し、衝撃速度と衝撃圧、生存率を評価しました。

容器から取り出されたクマムシを水分を与え、蘇生を試みた結果、さすがのクマムシでも秒速901m(1,14Gpa、地球大気の11,400倍)以上の衝撃には耐え切れないことが明らかになりました。衝撃にさらされたクマムシは断片になってしまったそうです。

生存率100%の最高速度は秒速728mでした。

生き残ったクマムシもただでは済みませんでした。銃で発射されなかったクマムシが8~9時間で蘇生したのに対し、発射した個体は16~36時間を必要としたそうです。

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どうやらムリっぽい……

また、これらの結果からクマムシが小惑星を経由して地球にやってきた可能性は低いことが示唆されました。

通常の小惑星は秒速1.000mをはるかに超える速度で落下するとされており、クマムシが生き残るにはあまりにも過酷すぎるためです。

しかし、条件によっては-例えば衝突角度が浅かったり-その限りではないとチーム論文内に記述しています。

余談ですが、2019年に月に衝突した無人探査機「ベレシート」は小惑星に匹敵する速度で落下したとされていますが、乾眠状態のクマムシが納められた「人工琥珀」は損傷を免れたため、月面で生きている可能性があるそうです。

なお、月の支配者がクマムシになる可能性はないとのこと。