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「藻」の遺伝子を組み込むことで視力を回復させることに成功!

藻を使用した先進的なアプローチが発表されました。

複数の大学が参加した国際的な研究チームは5月24日、学術誌『Nature medicine』に掲載された論文の中で、視力を失った被験者の網膜に藻の遺伝子を組み込むことで部分的に視力を回復させることに成功したことを報告しました。

この事例は、この種の光遺伝子治療により症状が改善した初めての報告例となります。

治療を受けた被験者は最終的にテーブルの上のモノをつかんで数えることもできるようになったそうです。

「今回の研究成果は、光遺伝学的療法を用いて視覚を部分的に回復させることが可能であることを証明するものです。」と、スイス・バーゼル大学のBotond Roska教授は声明で語っています。

・研究報告 : Nature medicine | Partial recovery of visual function in a blind patient after optogenetic therapy | Correspondence to José-Alain Sahel or Botond Roska.2021.

・Reference : GlobeNewswire / New York Post / BBC News

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20年ぶりの視力改善

新たな治療法の被験者に選ばれたのはフランス・ブルターニュ地方に住んでいる盲目の男性(58)でした。この男性は40年前に網膜色素変性症 (RP) と診断されました。

網膜色素変性症とは、網膜の表面にある光受容体が徐々に破壊される神経変性疾患です。遺伝子の異常が原因とされていますが、治療法は確立していません。最終的に全盲に行き着くこともあり、男性は過去20年にわたって視力を失っていました。

日本では4,000人~8,000人に一人が罹患していると言われており、指定難病のリストに加えられています。

今回の研究では、光遺伝学(オプトジェネティクス)の知識・技術を用いて男性の片方の目にチャネルロドプシンを生産する遺伝子を組み込みました。使用されたのは藻類から取り出した「クリムゾンR(Chrimson​R)」と呼ばれる遺伝子です。藻類はコードされた分子によって日光を感知し、それを鞭毛へ伝え、移動すると考えられています。

一時的に網膜の細胞を藻類のたんぱく質で置き換えるのではなく、たんぱく質をコードする遺伝子を植え付けることで細胞を光受容体を生産できるように”生まれ変わらせよう”というのです

さらに、被験者は外側にビデオカメラ、内側にプロジェクターが付属した特別なゴーグルのサポートを受けました。このゴーグルは周囲環境を撮影し、生産された光受容体が最も反応する波長に変換、投影する機能が備わっています。

実験の様子。youtubeより。

新しい光受容体が十分に置き換わるまで数ヶ月、改善が認められるまで7ヶ月を要しました。注射をした直後は効果を感じられませんでしたが、時間がたつにつれて物体の形をとらえられるようになったといいます。

さらに訓練を重ねることで男性はゴーグルをつけている間だけ横断歩道のストライプを識別できるようになったり、部屋の家具を見分けたり、廊下のドアを認識できるなど大幅な改善ー正しく数えられないこともあったーが見られました。

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新たな希望となるか

光遺伝子学はごく最近誕生した分野ですが、その成長スピードには目を見張るものがあります。

2019年の研究では、光パルスでいくつかのニューロンを発火させることでマウスに幻覚を”見せる”ことに成功しました。こうした研究を人に応用する動きもあります。

現状、男性の視覚回復は限定的なものです。まだぼんやりとした単色の景色にとどまっており、文字などは識別できません。

英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の教授であるJames Bainbridge氏は本研究を「非常に質の高いものだが、対象となったのはたった一人の患者だけだ。」と指摘。

そのうえで、「このエキサイティングな新技術は、重度の視力障害を持つ人々の助けとなるかもしれない。」と、述べています。

最後に、論文の筆頭著者であり複数大学の教授であり眼科医であるJosé-Alain Sahel氏は「光遺伝学によって患者が部分的な視力を取り戻すことができたのは、患者の協力、パリ視覚研究所(Institut de la Vision)とGenSightの学際的なチームの努力、そしてこのプロジェクトの原点であり中核をなすBotond Roska氏との長年にわたる協力関係があったからこそです。」と、語ったことを記述しておきます。