Electigmaについて

世界初の核実験によって最古の「人工準結晶」が生み出されていた

ハイスピードカメラで撮影された核爆発。

1945年7月16日の早朝、世界初の原子爆弾がニューメキシコ州で炸裂し、その後の戦争の行方を決定づけました。

トリニティ実験」とも呼ばれるこの核実験は、高さ30mの鉄塔に設置したプルトニウム型原子爆弾を爆発させる実験です。その爆発はTNT換算で約20ktと同規模のものでした。

一方この実験の裏で驚くべき物質が生まれてました。「トリニタイト(trinitite)」と名付けられたこの物質は莫大な熱エネルギーを受けた周囲の砂、鉄塔、実験のために敷設された銅線がガラス状に溶けて融合したものです。

そして現在、イタリア・フィレンツェ大学が主導する国際的な研究チームがトリニタイトの新たな秘密を明らかにしました。4月6日、学術誌『Pnas』で発表した論文の中で、この核実験の副産物が人間の手で作られた最古の「準結晶」であることを発見したのです。

・研究論文 : Pnas | Accidental synthesis of a previously unknown quasicrystal in the first atomic bomb test | Paul D. Asimow.et,al.2021

・Reference : Università degli Studi di Firenze / Los Alamos National Laboratory

・Via : Sciencealert

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摩訶不思議な結晶

食卓に置いてある塩から宝石店に並ぶダイヤモンドに至るまで、ほとんどの結晶はある一定の規則に従って原子(または分子)が配列されることによって成り立っています。

これは対称性と呼ばれる性質で、従来の結晶学では正三角形、正四角形、正六角形(120°90°60°)の図形を繋げていくことで空間を隙間なく埋め尽くし、より大きな結晶が構成されると考えられていました。

ですが、結晶にはよしとしないパターンが存在します。五角形を繰り返す図形です

正五角形で空間を埋め尽くすのが不可能なことは数学的に簡単に証明できるため、理論上ありえないとされてきました。正五角形ではどうしても隙間が生じてしまうのです。結晶は秩序か無秩序かのどちらかしかなく、その中間はないと考えられていました。

しかし、1982年にこの摩訶不思議な構造がダニエル・シェヒトマン氏によって作成されたことでこれまでの常識が覆されることなりました。現在、世界中で準結晶の応用に関する研究が進められています。

準結晶の一例 桜の花びらのような五角形が配列の中に見て取れる。。

余談ですが、シェヒトマン氏が投稿した論文は科学雑誌に掲載を拒否され、書き直した論文も2年以上も受理されなかったという出来事がありました。準結晶の研究に大きく貢献したシェヒトマン氏は2011年にノーベル化学賞を受賞しています。

準結晶の生成には極端な熱力学的衝撃が必要となります。そこでフィレンツェ大学の地質学者ルカ・ビンディ氏は核実験の副産物に目を付けました。トリニタイトならば高い生成条件をクリアできると考えたのです。

なおこの際、準結晶は金属を含む傾向があることが知られていたため銅と融合した赤いトリニタイト6つがサンプルに選ばれました。