あなたは1秒間に何回指を鳴らすことができますか?
その記録が何回であっても、この生物に勝つことはできないでしょう。
アメリカ・タウソン大学、デューク大学の研究チームが2月8日に発表した論文の中で、自然界で屈指の速度を叩き出せる小エビが紹介されました。
それによると、端脚類の一種である「Dulichiella cf. appendiculata」は、0.01秒未満、人間の瞬きの1万倍の速度でハサミを閉じることが可能とのこと。
研究報告:Current Biology/ Snaps of a tiny amphipod push the boundary of ultrafast, repeatable movement/S.J.longo.et.al.
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大きい生物の方が速いとは限らない
端脚類は、甲殻類の目の一つであり、世界中で1万種以上が知られている巨大なグループです。
彼らは、生物の死骸やプランクトンを好んで食べる、いわゆる「分解者」であり、基本的に汚れた海に住んでいるため、あまりわたし達が出会うことはありません。
デューク大学・パテック・ラボの研究チームは、そんな端脚類の一種であり、東海岸全体に分布している「Dulichiella cf. appendiculata」に注目。
特徴は、雄の片側にだけ存在する巨大な爪、その重量は大人の全体重の約3分の1を占めるそう。
しかし、これほど小さい生物の「超高速スナップ」を測定するのは容易ではありません。
そこで、研究チームはシャーレに入れたD.appendiculataを誘惑し、彼らが攻撃する瞬間を高性能ハイスピードカメラで撮影しました。
その結果、彼らの知られざる能力が判明。
ハサミを閉じる速度が速すぎるせいで、水の外側でも「パチッ」という音が聞こえ、キャビテーション(液体内で急激な圧力変化が起こることで発生する泡)も確認されました。
チームは、この機能が捕食者から身を守る目的で搭載されていると推測しています。
攻撃力がないように聞こえますが、ピンセットよりも小さな生物たちの世界では有効な防衛手段となっているのでしょう。
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既知の生物にはない3つのユニークな点
アメリカ・デューク大学の研究者は、「彼らは、スピードをさらに印象的にする独特な特徴を兼ね備えている」と語っています。
その特徴は3つ、「再装填が可能であること」、「水生生物であること」、「サイズが非常に小さく、軽いこと」です。
同レベルのスピードを誇る生物はいくつか知られていますが、これらの条件をすべてクリアできるのはD.appendiculataだけです。
例を上げると、モンハナシャコは、より高速で再現性のあるスナップを繰り出せますが、構造全体が大きく、体も丈夫です。
また、クラゲの刺胞細胞が毒針を発射する速度はマイクロ秒単位で表されますが、これらは一度しか使用できません。
動物界最速を誇るドラキュラアリの顎は、彼らを凌ぐスピードと再現性を兼ね備えていますが、抵抗の少ない空気中での話です。
つまり、D.appendiculataのスナップは、未だ確認されていない組み合わせによって成り立っているということです。