ハエトリグサは、素早く葉を閉じて獲物を捕食する有名な食虫植物(食肉植物)です。
食虫植物といえば、ハエトリグサを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
「虫を食べる」という他の植物とは違った生態を持つことが知られている植物ですが、特異な点はそれだけではなかったようです。
1月14日に「Scientific reports」に掲載された新しい研究によると、ハエトリグサが電気信号によって葉を閉じる際に測定可能な磁場を発生させていることが明らかになりました。
ですが、この磁場はあまりにも弱いため、植物の能力の一部というより葉を流れる電流の副産物であるとしています。
研究報告:Scientific reports/Action potentials induce biomagnetic fields in carnivorous Venus flytrap plants/A. Fabricant et al
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植物にも磁界が存在している
「電流が存在している場合、その周囲には必ず磁場が生じる」。これは電磁気学の基本です。
この法則はヒトを含めた生物にも適応され、電気的な活動を行っているものは、有機物・無機物関係なく、磁場を発生させています。
しかし、ヒトやその他の動物の磁場に着目した研究は豊富にありますが、植物界における磁界はあまり理解が進んでいませんでした。
そこで、チームは食虫植物のハエトリグサに注目。
ハエトリグサは、敏感な毛を持つ葉と棘のような感覚毛で構成されており、これに2回触れるとトラップ全体を閉じるための電気信号が走る仕組みになっています。
興味深いことに、このトラップは様々な刺激でトリガーが引かれます。
触る以外にも、塩水による浸透圧や熱さや寒さなどの熱エネルギーも要因となりえるそうです。
研究チームは熱刺激を使用することで潜在的な妨害要因を排除し、ハエトリグサが発する微弱な磁場を検出できるのではないかと考えました。
そこで、チームは「原子磁力計」と呼ばれる磁場に敏感に反応するセンサーで、ハエトリグサの磁界を分析しました。
その結果、0.5ピコテスラという強さの局所的な磁場が検出されたのです。
これは動物の神経インパルスによって生成されるのとほぼ同じレベルであり、冷蔵庫にあるマグネットの約300億分の1です。
研究チームの一員であるアン・ファブリカント研究員は、
「私たちは、多細胞植物システムの活動電位が測定可能な磁場を生み出すことを実証することができました。」
「磁場が検出されているのは、このほかに2つ、単細胞の藻とマメ科植物の2種類のみです。」
と、語っています。
同氏は、他の植物も磁場を発生させていると推測していますが、それらはさらに弱く、既存の機械では検出するのが困難であると考えています。
しかし、彼らは声明の中で、磁場を用いて病気や急激な温度変化を検出することで農作物などの診断に利用される可能性を示唆しており、今後のさらなる研究に意欲を見せています。