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液体でも固体でもない新たな物質の状態「液体ガラス」が発見される

いまや至るところで見かける「ガラス」は、触ってみると硬い感触が感じられ、叩けば割れる物質ですが、分子運動が固体と異なるため『液体と固体の中間状態』であると言われています。『ギリギリ安定している固体』と捉えてもいいかもしれません。

ガラスを理解しようとする試みは長年続けられており、今回ドイツ・コンスタンツ大学の研究チームは、粒子がこれまでにないような独特の動きをする新たな状態を発見しました。「液体ガラス」と名付けられたこの状態の物質は「個々の分子は移動できるが回転ができない」という奇妙な性質を持っています。

これによりガラスの分子運動の解明に一歩近づいきましたが、同時に新たな難題を抱えることとなったかもしれません。

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特異な性質をもつガラス

ガラスは本当に特殊な物質です。通常、物質が液体から固体に変化する際には、自由に移動していた原子(または分子)が強く結合し、高度に組織化された結晶を形成します。しかし、ガラスは500℃~800℃付近まで温度が下がると粘性が増し、原子が規則正しく並ばないまま「凍結」してしまいます。

この奇妙で無秩序な状態はアモルファスと呼ばれ、様々な分野で見られるため、研究が進められています。

新たな状態は、コロイド懸濁液のモデルシステムを観察している時に発見されました。

コロイド懸濁液とは、1μmよりも大きい固体粒子を液体に混ぜたもので、原子や分子の活動を観察するのに使用されるものです。これらの物質は分散性を制御することでガラス状態をモデリングすることができるため研究に適した素材と言えます。

チームは懸濁液に独自のアレンジを加えました。通常は球状の粒子を使うところを特殊な楕円形(卵型)の粒子を使用したのです。これにより粒子の方向がわかるようになり、これまでに知られていなかった複雑な挙動が検出できるようになりました。

研究者たちはその後、懸濁液中の粒子濃度を変化させながら「粒子がどのくらい動けるのか」、「どのくらい回転するのか」を観察。その結果、より高い濃度では粒子がお互いの回転を妨害するが、移動自体は自由に行えるという特異な状態「液体ガラス」を発見しました。

「液体ガラス」状態の粒子の位置と方向。credit:アンドレアス・ズンブッシュ教授とマティアスフックス教授の研究グループ

「球状の粒子とは対照的に、私たちの粒子には配向性があります。これにより、これまで研究されていなかった全く新しい種類の複雑な振る舞いが生まれます。」と、コンスタンツ大学の教授であるアンドレアス・ズンブッシュ氏声明で述べています。

「特定の粒子密度では、並進運動が持続するのに対し、配向運動は凍結した。その結果、粒子がクラスター化して同じような配向を持つ局所構造を形成するガラス状の状態になりました。」

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競合する粒子

チームは、観察された奇妙な振る舞いは2つの競合するガラス転移(相転移と非平衡相転移)が相互作用し合った結果だと考えています。液体ガラスは数十年前からその存在が予測されていましたが、これまで憶測の域を出ない理論上のものでした。

「これは理論的に非常に興味深いことです。」と、論文の共著者であるマティアスフックス教授は語っています。「私たちの実験は、科学界が長い間追い求めてきた臨界揺らぎとガラスの停止の間の相互作用を示す証拠を提供しています。」

ガラスを理解するということは、わたし達の身近にある窓の質が上がるということではありません。金属やプラスチックなど一部の物質はガラスのような分子構造を持っています。今回の発見はそれらの物質にも同様のプロセスが働いている可能性に光を当てるものです。

また、液晶デバイスの開発にも影響を与える可能性があると研究チームは示唆しています。

この研究はPNASに掲載されました。

consultation:IFLscience/NewAtlas/コンスタンツ大学