「脳食いアメーバ」はゆっくりと、しかし確実にアメリカを北上している・・・

『脳食いアメーバ』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

1965年にオーストラリアで最初に観測されたこのアメーバは人間に対し病原性を示し、その特異な病態から「殺人アメーバ」と呼ばれることもある凶悪な生物です。

致命的な疾患はそれほど頻繁に起こるものではありませんが、一度脳に侵入したが最後、重度の脳髄膜炎を引き起こし、宿主を高確率で死に至らしめます。

そんな小さな怪物ですが最新の研究により、少しずつ生息地を北へ広げていることが発覚。以前よりも中西部の州で多くの症例が発生していることが明らかとなりました。

ヒトの体内に鼻から侵入!?

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、脳食いアメーバ(学名Naegleria fowleri:ネグレリア・フォーレリ)は好熱性で、湖や温泉などの淡水に生息している単細胞生物です。

ネグレリア・フォーレリは汚染された水が鼻に入ると、嗅神経(嗅覚を司る神経)を介して脳に移動し、その後原発性アメーバ性髄膜脳炎 (PAM)と呼ばれる致命的な脳感染症を引き起こします。

脳に侵入すると脳の膨張に伴う発熱、頭痛、痙攣が現れ、昏睡状態に陥る。死亡までの期間は平均して5日と非常に短く、致死率は90%以上にのぼるとのこと。

しかし、これだけ凶悪な性質を持っているにもかかわらず、彼らの好物は水中に生息する微生物であり、鼻から侵入されなければ感染の危険性がないため、1年間でこの怪物の犠牲になった人は0人~8人程にとどまっています。

ネグレリア・フォーレリの分布を調査

アメリカ・疾病対策予防センター (CDC) の研究者たちは、1978年から2018年までの間にアメリカ国内で確認されたPAMの症例を分析し、湖、池、川、貯水池での水泳などで水に暴露したものを選出。ネグレリア・フォーレリ症例の分布の調査を試みた。

その結果、チームは基準(PAMを発症し、水曝露が確認されていること)を満たす症例を85例を特定。

発生場所を分析したところ、大半はアメリカ大陸南部の州(フロリダやテキサス)で発生していたが、ミネソタ州、カンザス州、インディアナ州を含む中西部で6例報告されており、そのうちの5例が2010年以降に発生したものであると明らかになりました。

1978年から2018年にかけて、米国の原発性アメーバ性髄膜脳炎の症例に関連するレクリエーション用水への曝露の場所。
1978年から2018年の間に報告された原発性アメーバ性髄膜脳炎の症例。その年代。credit:Radhika Gharpure.et.al/CDC

また、研究チームがコンピュータモデルを使用して年間の最大緯度の推移を調べたところ、調査期間中に年間約13.3kmのペースで北へシフトしていることが判明。

気温の上昇とそれに伴うウォータースポーツなどのレクリエーションの増加がこうした変化に関わっているものと見られています。

ネグレリア・フォーレリの迅速な検査方法はないため、感染を防ぐ方法は温水で泳ぐことを避けるしかありません。

もしも川や湖で泳ぐ場合は鼻を水面から出しておくことをおすすめします。

参照:CDC/livescience

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