
ミツバチの仕事の中にはうんちを集めることも入っているのかもしれません。
アジア圏に生息するトウヨウミツバチ(A. cerana)はスズメバチに対抗するために動物のフンを利用している可能性がPlos Oneに掲載された研究論文で示唆されました。
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ミツバチも道具を使用する
昨年末、アメリカ・ワシントン州北西でオオスズメバチが観測されてから現地の昆虫学者たちは様々な対策を講じ、定着を防いできました。
その理由として、数匹でミツバチのコロニーを殲滅できる戦闘力とその毒性の強さにあります。
現に、ワシントン州の養蜂家では何千匹ものミツバチが惨殺される被害にあっており、セイヨウミツバチはオオスズメバチに対する有効な防御戦術をとれないことから、国内のミツバチの生息数が激減するのではないかと危惧されています。
本研究を主導したウェルズリー大学のヘザー・マティラ教授はオオスズメバチが北米に上陸することを非常に懸念しており、「今後、(国内の)ミツバチは虐殺されるでしょう。今まではスズメバチにさらされていなかったというだけで、彼らは格好の標的なのです。」と語っています。
このような状況の中、調査チームの一人がベトナムを訪れた際、ミツバチが家畜からフンを収集し、入口付近をコーティングすることでオオスズメバチを撃退していることを発見しました。
このスポッティングはオオスズメバチ撃退に効果的なだけでなく、ミツバチが道具を使用した最初の明確な例であると、ヘザー・マティラ教授は述べています。
この事例をさらに調査するためにチームは、ベトナムにおもむき、現地で実験を行いました。
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恐るべきフンの効果
チームはベトナムの養蜂家に協力してもらい、鶏、豚、水牛、牛からフンを集めて養蜂場近くに塚を作りました。
ミツバチがどの糞を好むのかを検証するためです。
結果として、約150匹のミツバチが塚を訪れ、豚などのより匂いの強いものを集めていることが判明。さらなる調査をするために印をつけ、行動を追跡しました。
すると、フンを持ち帰ったミツバチは入り口の周りに配置していることが明らかとなりました。
次に、チームはフンの効果を調べるために3タイプ(フンの量:軽、中、重)の巣を作り、スズメバチの襲撃頻度、滞在時間を調べました。
その結果、フンが集中している場所ではスズメバチの滞空時間が半分以下になり、巣を襲撃した際に入り口を攻撃する時間が94%減少したことがわかりました。

また、スズメバチの攻撃を誘導するために設置していたフェロモンを付着させた紙もフンで覆われていたといいます。
フンがどのようにしてスズメバチを撃退しているのか、その理由はよくわかっていません。
イモリや特定のイモムシが自身の排泄物に身を包み、捕食者を欺き、匂いを誤魔化すことが知られているため、研究者たちはスズメバチのフェロモンを覆い隠しているのではないかと考えています。
この研究をさらに進めていけばセイヨウミツバチをオオスズメバチから守れるかもしれません。
参照:Plos One