大阪大学を中心とした研究チームは、月に残されたクレーターを調べることで、8億年前に月と地球が「小惑星のシャワー」による大規模な被害を受けていたことを明らかにしました。
地球に落ちた隕石の総量は少なくとも4京~5京キロに上るとされており、6600万年前に恐竜を絶滅させた「チクシュルーブ衝突体」の約30~60倍の影響を与えたとされています。

直径10~15キロ規模の小惑星は1億年に1回の頻度で地球に衝突すると言われています。
しかし、地球上では火山活動や侵食などによる風化によりクレーターなどの痕跡が残りにくく、6億年以上前に発生した衝突の証拠はことごとく洗い流されてしまっています。
実際、約6600万年前のクレーターである「チクシュルーブ・クレーター」もすでに大部分が埋まってしまっています。これよりもさらに古いものを探すのはこんなんでしょう。
そこでチームは、風化がほとんどない月に注目。JAXAの月周回衛星「かぐや」が撮影した月面クレーター加増から地球に落ちた隕石の総量を調査しました。
Nature Communicationsで説明されているように、大きなクレーターの周囲に形成された小さなクレーターの密度を調べることでその年代を推定することができます。

直径20キロを超えるクレーター59個を解析したところ、「コペルニクスクレーター」を含む8~17個のクレーターが同時に形成されたことが判明。アポロ計画で持ち帰られた月サンプル記録から年代は8億年以上前のものとされました。
位置と重力の関係上、地球は月に比べて約23倍の質量の隕石が落ちることが知られています。計算の結果、チームは地球に落ちた質量は少なくとも4京~5京キロに上ると結論付けています。
このような小惑星爆撃を引き起こした母天体はどのような天体だったのでしょうか。
「コペルニクスクレーター」(直径93キロ)ものクレーターを形成するには幅100キロを超える大きさと、軌道共鳴と呼ばれる軌道が不安定となる領域付近にいる必要があります。
さらなる分析の結果、8.3億年前に分裂し、その半分近くが小惑星帯から離脱した「Eulaliaファミリー(おイラリア族)」に分類されることがわかりました。
興味深いことに、このEulaliaファミリーには「はやぶさ2」が探査している小惑星「リュウグウ」が含まれています。もしかしたら8億年前の「小惑星シャワー」の残骸かもしれません。
「はやぶさ2」が地球に持ち帰る試料に期待しましょう。
この研究はNature Communicationsに掲載されました。
参照:iflscience / 大阪大学