最新の研究により、「エニオン(anyons)」と呼ばれる既存の分類に当てはまらない準粒子が存在する証拠を初めて発見しされました。
この素粒子は約40年前に予測されていたものの検証が難しく、2つの研究チームが異なる方法で確認したことでようやく決定的となりました。

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エニオンとは
現在、3次元宇宙に存在する素粒子は「フェルミオン」と「ボソン」の2種類に分類できるとされています。
私達の体、岩、水、鉄など実態のある物質を構成しているのが「フェルミオン」なのに対し、「ボソン」は実体を持たず、フェルミオン同士の相互作用を強固にする働きがあります。
しかし、準粒子である「エニオン」はどちらにも分類されない異常な特性を持っています。
例を上げると、単極磁力の準粒子には磁極が1つしかありません。
これは「磁石は2つに割ったとしてもN極とS極の2の磁極を持つ」とする既存の科学的認識と矛盾します。
さらに、「エニオン」は通常の3次元空間では発生せず、極薄の2次元空間の中でのみ電子の集合体として出現し、あたかも1つであるかのように振る舞うという特異な行動を取ります。

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第三粒子はどのように証明されたのか
「エニオン」は1970年代後半からその存在が示唆されてきました。
にもかかわらず、近年になっても誰もその存在を証明できなかったことから、学者の間でも”架空の粒子”なのではないかと疑われてきました。
しかし、理論物理学者たちは手も足も出なかったわけではありません。
1984年に発表された独創的な2ページの論文は準粒子と「エニオン」の関係性を示し、2016年には3人の研究者が2次元で粒子を衝突させる実験器具を公表しました。
そして今回、研究チームはこれらの情報を武器として昇華させ、長年の謎に戦いを挑むこととなります。
「エニオン」が存在するという証拠を集めるには「2次元の空間」と「粒子を確実に衝突させるための装置」が不可欠です。
そこでチームは、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムの極薄構造を製造し、絶対零度付近まで凍らせることで粒子の動きを制限しつつ強力な磁場により、粒子をその場に固定できるようにしました。

粒子が運動を2次元に制限され、強い冷気と磁場にさらされると「量子ホール効果」と呼ばれる現象が起き、磁場中の電子を集めて単一の電子を持つ準粒子を中央地帯に作り出すことができます。
このような工程を得て稼働させた装置を調査すると「パジャマストライプ」と呼ばれるパターンが検出されました。この干渉パターンは「エニオン」が生成された決定的な証拠として使用することができます。
理論家たちはもしも本当に「エニオン」が存在するのだとしたら量子コンピュータに使用できるのではないかとして注目しています。既存のデバイスは非常にデリケートに作られていますが、エニオンをベースとした場合、非常に外部圧力に強いデバイスを作ることができる可能性があるためです。
この研究はarXivに掲載されています。
参照:iflscience / nature