人が多いほど犠牲者に介入しない「傍観者効果」がラットでも報告される

誰かが苦痛を訴えている時、自分以外の人が多いほど率先して行動を起こさなくなる集団心理のことを「傍観者効果」といいます。

この奇妙な振る舞いは人間特有のものだと考えられてきましたが、最新の研究でラットにも同様の心理現象が確認されました。人間以外の動物でこの現象が確認されたのは初めてとのこと。

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筆頭著者であるペギー・メイソン氏は、本研究はキティジェノヴェーゼ事件から着想を得ているといいます。

この事件はキティジェノヴェーゼ氏が夜道を歩いていたところを襲撃された時、悲鳴を聞いた隣人が38名もいたにも関わらず誰1人として警察に通報しなかったというものです。

捏造の多いこの事件ですが、後に行われた複数の研究により「ある人がグループの一部である場合、1人でいるときより犠牲者に介入する可能性が低くなる。」「責任の拡散によって個人的な責任が感じにくくなる。」ことが根本的な原因であると仮定されました。

しかし、メイソン氏はこれらの要因に加えて哺乳類の遺伝子に組み込まれた本能的な因子があると主張。それを証明すべく、比較的ヒトに近いモデルであるラットを使用して実験を行いました。

メイソンラボラット
実験中のラット。credit : シカゴ大学医療センター / デビッド・クリストファー

研究チームはラットをデバイスで拘束し、それを見た周囲のラットが救助するのかどうかを調査しました。

この時、鎮静剤を投与した1~2匹のラットを救助を手伝わない「傍観者」として配置しています。そして「傍観者」がいる状態で投薬を受けていないラットが仲間を助けるのかを観察しました。

すると、1対1の時に仲間を助けようとしたラットでも「傍観者」がいると犠牲者に介入する確率が低くなることが判明しました。

さらに奇妙なことに、傍観者がいる状態で救助を行ったラットで1対1の実験を行うと、救助をためらうことも明らかとなりました。メイソン氏はこれを「ギャラリーがいなくなったため」だと説明しています。

一方で、鎮静剤を与えていない「協力的なラット」を投入したところ、ラットは1対1のときよりも積極的に救助を行ったとのこと。

credit : シカゴ大学医療センター / デビッド・クリストファー

本研究による新しい発見は、人間の不可解な行動を説明する手助けとなるでしょう。

ジョージフロイドの殺害を含む動画には、被害者を助けようとする民間人がいる中で周りの警察官が傍観している様子が収められています。

メイソン氏はこの問題が生物学に基づく傍観者効果と、それを介入を推奨しない警察のシステムにあると推察しています。

この研究はScience Advancesに掲載されました。

参照:Inverse