デューク大学の研究チームは、本物の軟骨の強度と弾力を兼ね備えたハイドロゲルの開発に成功したと発表しました。
新たに作られたゲルには吸水ポリマーが使用されており、人間の軟骨と同様に時間が経っても摩耗することなく、引張や重い荷重に耐えることができる性能を示した世界初のものとなります。

膝の骨と骨の間にある薄い軟骨層は、お互いに滑らかに稼働することで体重の2~3倍の質量を吸収することができる”魔法”のような素材です。
しかし、この組織には血管が通っていないために再生能力が極めて乏しく、一度破損してしまうと回復することなくさらに重症化するという欠点が存在しています。
米国では毎年79万件の膝関節置換術が行われていますが、その効果は20年ほどしか持続しないとされており、高性能な「人工関節」が待ち望まれています。 そこで研究チームは、1970年代から軟骨の代替品として検討されていたハイドロゲルに目をつけました。ハイドロゲルとは水を内部に含んだ物質の総称であり、ソフトコンタクトレンズや使い捨ておむつなどに幅広く使用されている物質です。
ゲルは「滑りやすく、衝撃を吸収し、周辺の細胞を傷つけない」という特性を持っていましたが、関節のような大きな負荷がかかる部位には不向きでした。
そこでチームは2種類のポリマーネットワークを組み合わせた新しいゲルを開発しました。
ゲルはスパゲッティのような繊維でできたポリマーが剛直な網状の高分子体と絡み合う構造となっており、その隙間をセルロース繊維が埋めることで「柔軟性」と「剛性」を両立させています。
調査の結果、このゲルは既存の他のゲルよりも優れた性能を発揮し、10万回の引張試験では骨インプラントに使用されるチタン素材と同等の剛性が確認されたとのこと。

また、本物の軟骨と100万回すり合わせるテストの結果、現在使用されている人工軟骨の4倍の耐摩耗性を示しました。ハイドロゲルは細胞に対して「無毒性」を有していることも判明しています。
判明している性能は実験室内での検証がほとんどですが最終的には、この新しい材料は膝の痛みを経験している人が長期間の治療を必要とせず、好きなことをできるようにしてくれるかもしれません。
参照:sciencealert / デューク大学