
広い宇宙には一風変わった星が数多く浮かんでいます。
中心がダイヤモンドで構成された「かに座55番星e」や鉄の雨が降り注ぐ「WASP-76b」など、話題に困ることはありません。そして今回、新たに「毎日太陽1つ分とほぼ同等の質量を捕食する”宇宙で最も空腹”なブラックホール」がそのリストに追加されることとなりました。
このブラックホールは既知のオブジェクト内でも最大級のものであり、その質量は太陽質量の340億倍にも及びます。
一体どれほど大食いなのでしょう・・
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思ったよりもデカかった!
問題の巨大ブラックホールは2018年に初めて発見されたもので、数十億光年離れた「SMSS J215728.21-360215.1(以後J2157)」と呼ばれる、銀河の中心にあるクエーサーの動力源となっています。
発見当初、このブラックホールの質量は太陽の200億倍程度と見積もられ、捕食速度も現在よりも低く見られていました。
しかし、質量を再測定することを目的とした観測の結果、このブラックホールは予想以上の大物であることが判明します。
新たに導き出された質量では、ブラックホールのシュヴァルツシルト半径(事象の地平面の半径)は約670天文単位(au)だということが明らかとなりました。
わかりにくいので比較対象を挙げると、太陽から冥王星までの距離が平均39.5au、太陽風が広がりを見せる限界点(太陽圏)が100auだとされています。つまり、「J2157」のシュヴァルツシルト半径は大陽圏の6倍以上ということになります。

「ブラックホールの質量は、天の川の中心にあるブラックホールの約8,000倍です。もしも天の川のブラックホールがこれほど巨大になろうとしたら銀河の3分の2の惑星を飲み込む必要があるでしょう。」と、オーストラリア国立大学のクリストファー・オンケン氏は語っています。
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ブラックホールの秘密を知れるかも
しかし、「J2157」は宇宙で最大のブラックホールではありません。
約7億光年離れた巨大銀河「Holm 15A」の中心には太陽質量の400億倍のブラックホールが存在しており、さらに104億光年先の宇宙には、太陽質量の660億倍のブラックホールがクエーサー「TON 618」の動力源として存在しています。問題なのは、両者ともに詳細な観測が出来ない点にあります。そのため「ブラックホールがどのようにして形成され、成長するのか」は不明のままです。
しかし、宇宙が現在の10%にも満たない時代に誕生した「J2157」は違います。
このブラックホールはクエーサーのため非常に見つけやすく、その途方も無い距離は私達が見ている姿が初期宇宙の頃のものであることを意味しています。
この発見はブラックホールが宇宙史のなかで、どのようにして巨大化したのかを解き明かす手がかりとなる可能性があります。
「このような巨大なブラックホールがあれば、それが成長している銀河について何がわかるのか、私たちもワクワクしています。」と、主執筆者であるクリストファー・オンケン氏は語りました。
また同士は、「この銀河は初期宇宙の巨大な銀河の一つなのか、それともブラックホールがその周囲の膨大な量を飲み込んでしまったのか?それを解明するためには、調査を続けなければなりません。」としてさらなる研究に意欲を見せました。
この研究は Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載されました。 参照:sciencealert / オーストラリア国立大学