
質量の大きな星が寿命を迎えると、それ自身の重力により崩壊し「ブラックホール」を残し、質量の十分でない場合は、超新星爆発を起こし、中心核が密集した「中性子星」に生まれ変わります。
しかし、天文学者はこの「質量の違い」に長年苦しみ続けてきました。
トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界によると中性子星になりうる惑星の限界点は太陽の1.5~3倍であり、それを超えるとブラックホールになるはずですが、最も重い既知の中性子星は太陽の約2.5倍にすぎず、最も軽いブラックホールは約5倍となっています。この「境界」を下回った、または上回った天体は未だ発見されておらず、この均衡が崩れた時、一体どんな天体が誕生するのかという疑問が残りました。(質量ギャップと呼ばれています。)
しかし、この疑問は近い将来解明されるかもしれません。
ヨーロッパの天文学者チームによる新しい研究により、太陽の2.6倍の質量を持つオブジェクトが発見されました。この数値はギャップを埋めるのに十分なものであり、解決不可能と考えられていた課題に光をもたらす可能性があります。
ブラックホールと中性子星、両方の性質を併せ持つ何か?

観測によると、この信号は地球から8億光年離れた場所から発信されたものであり、太陽の2.6倍の質量物質がその9倍以上の質量物質に飲み込まれている場面でした。
「空白地帯」を埋める可能性のある天体の発見は即座に他の天文台にも伝えられ、何十台もの宇宙望遠鏡が生成された波を求めて観測を開始しました。
しかし、「観測対象があまりにも遠すぎたこと」、「両者の質量に差がありすぎたこと」、「ブラックホールが光を発さないこと」などが災いして追跡調査を行うことが出来ず、結局観測できたのは発見時の1度きりとなりました。
それに伴いこのオブジェクトが「最も軽いブラックホール」なのか、はたまた「最も重い中性子」なのかは不明となってしまいました。
研究者は「質量差がありすぎて1口で飲み込んでしまったのだろう。」、「まるでパックマンのようだ。」と語っています。

また、今回の「質量物質同士の衝突」は重力波イベントとして観測された中で最大のものとなりました。
しかし結果がどうであれ、今回のオブジェクトが「最も軽いブラックホール」か「最も重い中性子星」か「その両方の性質を併せ持つ何か」であることは間違いありません。
この検出はほんの始まりに過ぎません。つい最近、天文学者は太陽の2.17倍の質量をもつオブジェクトを発見しており、興味深い挙動を示しているとのことです。
今後、さらなる技術的発展とともに今回のオブジェクトの正体が判明する日が来ることを期待しましょう。
この研究はAstrophysical Journal Lettersに掲載されました。 参照:Caltech / Max Planck Institute