科学者は、人間と動物にキメラと表現されるマウス細胞とヒト細胞の両方を含むマウス胚を作成しました。ヒト細胞の割合は4%程ですが、これまでに記録された動物の中で最高レベルの細胞数です。
Science Advancesに掲載された研究によると、バッファロー大学の研究チームは、マウスの胚で成熟ヒト幹細胞を劇的に生産する方法を開発しました。ペトリ皿の中で作られた細胞はうまく動作しないことが多いため、生体内で細胞を算出する手法はヒジュに重要です。 「これは、マウスの胚を使って人間の発達をよりよく理解するのに役立つ基礎的な研究です。」と、著者であり生理学・生物物理学の教授である建鳳は声明で述べました。「この技術が役に立つようになるまでには多くの疑問がありますが、マウスの胚の中にこれほど多くの成熟ヒト細胞を生成したのは初めてです。」

以前の研究では、マウス胚内のヒト細胞は0.1%程しか検出されていませんでした。そのため4%のヒト細胞を有するマウス胚の作成は非常に印象的です。
この研究では、マウスの胚に「プライム型」に転換したヒト幹細胞を注入することでキメラマウスを作成しました。
多能性幹細胞は大きく2つのタイプに分類することが出来ます。1つは未分化状態であらゆる細胞に変化することができる「ナイーブ型」、もう一つは分化しが進み、あらゆる組織に変化することができる「プライム型」です。
この2つの状態は似ているようでいて大きく違っています。マウスの胚盤胞内の細胞塊は「ナイーブ型」なのに対し、ヒト幹細胞は「プライム型」のためそのまま注入してもうまく動作させることが出来ません。
そこで研究チームはヒト幹細胞を「プライム型」から「ナイーブ型」に転換させる方法を調査した結果、mTORという哺乳類が持つタンパク質キナーゼの一種を一時的に3時間阻害することでナイーブ状態に戻すことに成功しました。
このような過程をえて得ることが出来たナイーブなヒト幹細胞を生後3.5日目のマウス胚盤胞に10~12個注入しました。マウス胚はその17日後、赤血球、目の細胞、肝臓の細胞など、数百万の成熟したヒト細胞をもたらしました。
ヒトの胚では、人の赤血球を作成するのに8週間かかることから、マウスの胚を用いたこの手法はかなり速い速度で細胞を作成することができるといえるでしょう。
研究者らはこの手法は非常に多くの細胞を産出することができるため、患者の損傷した細胞を健康なヒトの細胞または組織で置き換えることにより、糖尿病や腎不全などの慢性疾患を治療するための材料を生成する可能性があるとしています。
「これは、人間の発達をよりよく理解するためにマウス胚を使用することを可能にする基礎的な研究です。」と、建鳳は語りました。
「我々の技術のさらなる発展は、マラリアやCOVID-19のような重大な人間に影響を与える病気を研究するために、より効果的なマウスモデルを作成することを可能にするために、成熟したヒト細胞の特定のタイプのさらに大量の生成を可能にする可能性があります。」
参照:scitechdaily / バッファロー大学