『人間に温かい感覚を感じ取るニューロンはない』というこれまでの常識を覆すような研究が発表される。

人間は温かい、または冷たいという感覚を皮膚の温度変化で感じ取ることができます。これまでの研究では冷たい刺激により活性化するニューロンと温かい刺激により活性化するニューロンが体に備わっていると仮定されてきましたが、今回の研究はそれが間違いであることを示唆しています。

ドイツのマックスデルブリュック分子医学センターの研究者であるリカルド・パリシオ・モンテシノス氏らは哺乳類における温感と冷感の違いについて調査、研究を進めてきました。

しかし彼等は奇妙な問題に直面しました。それは『温かい刺激を誰が受容するのか』という謎でした。

温度を感知する受容体やニューロンに関する研究は進んでいるにも関わらず、明らかに温感を伝えることができるニューロンと受容体が少なすぎるからです。その数は全体の数%程しかありません。

研究者はこの謎を解き明かすためにマウスを用いて実験を行いました。マウスは人間と同じく温度を感じ取ることができ、1℃という微細な温度変化も知覚することが出来ます。

credit:neuron

マウスは行動と水が制限され、下のパットの温度が32℃から42℃へ上昇すると水が供給される空間に閉じ込めました。すると、上段2つの健康的なマウスは温度変化を感じ取ると水が出ていないにもかかわらずストローをなめました。

しかし、下段の冷感を伝えるニューロンであるTrpm8を先天的に破壊されたマウスはパッドの加熱を感じ取ることが出来ず、水が出てくる条件を把握できませんでした。数%の温感受容体だけでは温度変化を感じ取れなかったのです。

この結果を受けた研究者たちは『マウスの手足には冷感を感じるニューロンしか存在しない。』 という結論に達しました。

この研究の結果、マウスが温感を感じ取る事ができるのは温感専用のニューロンがあるからではなく、冷感を伝えるニューロンが温かい刺激によって活動が抑制されることで温かさを感じ取ることができる事がわかりました。生物学的には『負の調節』と呼ばれている機能です。この結果は人間に当てはめることが出来ます。

ただし、火傷などで熱を感じているのは痛みを感じ取るニューロンが活性化しているためなので今回の研究とは別のものです。

今回の研究は神経科学の盲点を突き、研究に新たな光を示します。今までの研究は『温感を感じ取れる神経がある』事が前提条件で進められており、見落としがある可能性も出てきました。

「私たちのデータは、これらの感覚情報の2つのストリームが脊髄または脳のどこでどのように統合されて、正確で特定の熱知覚を促進するかを発見する分野に挑戦しています。」と、研究者らは論文を締めくくっています。

参照:neuron