天の川銀河で最速の星がブラックホール付近で発見される。

天の川銀河を調査している研究者たちは約7年間の観測の末、観測史上最速で公転する星を発見しました。

いて座A*を周回しているこの極端な星は光速度の約8%、秒速24,000キロという途方も無い速度で移動しています。

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天の川銀河の中心部には「いて座A*(いて座エースター)」という太陽の約400万倍の質量を持つ超巨大ブラックホールが存在しています。

このブラックホールは質量があまりにも巨大なため、付近を通過する恒星の公転周期に多大な影響を与えます。太陽のような本来「自分よりも小さな恒星を振り回す」側の恒星もこの影響から逃れることはできず、影響範囲に入ったが最後、バラバラに壊されてしまうでしょう。

しかし、公転する天体は主星に近づくほど公転速度と遠心力が大きくなります。ビー玉を中心が窪んだ容器に入れた場合を想像するとわかりやすいでしょう。

公転速度が速ければ速いほど、中心付近を通過した際の瞬間速度が早くなり、それに伴い遠心力も大きくなるため、釣り合いが保たれています。

これらの要因が重なった結果、ブラックホール周辺の星々は異常な公転速度を叩き出し、光速度と比較されるほどの速度を出しています。

いて座A*の周囲を高速で公転する恒星は複数観測されています。その中でも長らく「S2」と呼ばれる恒星が最速の星だと考えられてきました。しかし、「S2」よりもさらに近い領域を公転する「S

62」が発見され、観測の結果、光速の約6.7%の速度で公転しているとされていました。

そしてつい最近、この領域を公転する星がさらに5つ発見され、その中の「S4714」という星がいて座A*に最接近する星であり、天の川銀河の中でも最速の恒星であることが明らかになったのです。

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銀河の中心部では私たちには想像もつかないようなことが当たり前のように起きています。

ブラックホールに振り回される「S2」発表された時は天文学者に衝撃を与え、アインシュタインの一般相対性理論やニュートン力学の検証がなされるなど、天文学、物理学の双方にとってこの場所は非常に重要です。

「S4714」はいて座A*にかなり近づいており、最接近時にはブラックホールから約19億キロの距離を秒速24,000キロの速度で移動しています。光の速度は真空中では大体30万キロ毎秒と定義されているため光速度の8%という計算は間違っていないようです。

しかし、「S4714」はあくまでも現在の最速記録保持者であり、さらに公転速度が速い星が隠れている可能性があります。

そして、それが発見されるのは時間の問題です。

2021年に打ち上げ予定のジェイムズ・ウィップ宇宙望遠鏡を筆頭に今後、数多くの高性能な大型望遠鏡が登場します。それにより、今まで発見できなかった星を発見することができるでしょう。

2022年秋にはいて座A*に捉えられた恒星の1つである「S62」が再び最接近する予定です。新たに導入された宇宙望遠鏡により物理学の検証とともに新たな星の発見に期待しましょう。

参照:iflscience