健康なヒト細胞の中から「四本鎖DNA」が初確認される

1953年、ジェームズ・ワトソンフランシス・クリックによってDNAが二重らせん構造であることが突き止められました。

しかし、適切な環境と材料があれば、DNAは通常とは異なる挙動で折りたたまれ、謎に満ちた四重鎖構造を取ることが知られています。

G-quadruplex(グアニン四重鎖)と呼ばれるこの構造は試験管内や一部のがん細胞でしか確認されていなかったため詳細な役割は不明のままでした。

しかし、最新の研究によって健康なヒト細胞内で「四重らせん構造のDNA」が確認されたことにより、私たちのDNAは四重らせん構造でも運用されていることが明らかになりました。

「今回初めて、四本鎖DNAが細胞内に存在し、正常な細胞過程で作られた安定した構造であることが証明されました。このことは、私たちにDNAの生物学を見直させるものです。」と、主席研究員の一人であるマルコ・ディ・アントニオ博士は声明で述べました。

「この発見は、基礎生物学の新しい分野であり、がんなどの病気の診断や治療に新たな道を開く可能性があります。」

四本鎖DNAのイメージ画像。credit : ICL / Ella Maru Studio

過去に行われた四重鎖(G4)の追跡はいずれも細胞を殺すか、高濃度の科学薬品に浸した状態でなされてきました。そのため、四本鎖DNAが私たちの体の中(通常の環境下)でどのような働きをしているのかわかっていません。

しかし、今回新たに生きているヒト細胞内のG4に付着させ、可視化させることができる蛍光マーカーが開発されたことにより四本鎖DNAをリアルタイムで追跡し、その働きを調べることが可能となりました。

その結果、四本鎖DNAはタンパク質などを作る遺伝子コードを一時的に開いた状態にすることで転写などのプロセスを促進している可能性が示唆されました。

また、さらなる分析により、四本鎖DNAはがん細胞内で頻繁に検出されていること、異常な速度で形成、消滅することが判明しました。

このことからチームは「四重鎖は特定の機能を果たすためだけに形成されており、もし長く持続しすぎると、通常の細胞プロセスに害を及ぼす可能性がある。」と考えています。

四重らせん構造と二重らせん構造の比較。credit : Carika Weldon

通常、このような機能は「遺伝子発現を抑制、伝達するシステム(エピジェネティクス)」によって行われます。

一般的なエピジェネティクスはDNAのメチル化と呼ばれています。特定の遺伝子にメチル基が追加されるとその遺伝子は「オフ状態」となり新たなタンパク質が生成されなくなります。

また、細胞分分裂を通じて親の後天的変化を娘細胞に受け継ぐ事ができるという性質を持ちながらも突然変異とはまた別の独立したシステムであることが知られています。

研究では、これと同等の機能を四重鎖も有していることが判明しました。この奇妙な遺伝子構造はタンパク質を増産する一方でメチル化による抑制も行っているのです。

この新しい技術は登場したばかりであり、四本鎖DNAの機能が全て明らかになったわけではありません。

しかし、研究者は間もなく遺伝子の中にあるこれらの不可解な構造の役割を完全に解明し、それらがいかに重要であるかを理解し始めることができるだろうとしています。

「私たちはこの構造がDNAの正常な状態であると推測しています。今回の研究は、DNAが固定された構造や形状ではないことを証明するもう一つの例外的な例です。」と、イースト・アングリア大学のゾウウォラーはコメントしました。

この研究はNature chemistryに掲載されました。

参照:iflscience / Newscientist