若者の血を輸血しなくとも「血を薄める」だけで若返り効果を得られるという研究結果

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かの有名な「エリザベート・バートリー」がそうであったように、人間は古くから「若者の血には若返り効果がある」と考えてきました。

この予想はあながち間違いではありません。

2005年、カリフォルニア大学バークレー校の研究者たちは若いマウスの血液を年老いたマウスと共有すると、老化の兆候が逆転するということを発見しました

ところが、実は”若返り効果”の鍵を握っている部分は「若い血液」ではなかったかもしれません。

同じチームが行った新しい研究は、年老いたマウスの血漿を「希釈」しただけでも同様の効果を得られることを示しました。

老化を「リセット」

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かつて行われた「血液共有実験」には2通りの解釈がありました。

1つ目は、「若者の血液には特別な”なにか”がある」という説。これにより年老いたマウスの受容体が刺激され、再生能力が活性化したというもの。

そしてもう1つが、「年老いたマウスの血液には有害な物質が含まれている」という説。この物質が若い血液によって”中和”されたというもの。

そこで重要なポイントとなるのが古い血液を共有された「若いマウス」です。このマウスにはも追う片方とは対象的に「老化」の徴候が見られました。

若い血液に若返り効果があるのならば、老化した血液の影響など受けないはずであり、必然的に後者の説が有力視されることとなります。

要するに研究チームは、加齢に伴って蓄積される特定の「有害物質」が老化の原因であり、血液の共有による”血の希釈”が若返り効果を得るのに必要な要素であると考えたわけです。

若者の血は必要ない?

この仮説を検証するために、チームは若くも老いてもいない「ニュートラル」な物質で血液を希釈することを思いつきました。

実験では、血液を他の動物のものと交換するのではなく、血漿の主成分である生理食塩水アルブミンと呼ばれるタンパク質の一種の溶液と入れ替えることで血液を希釈しました。

すると驚くことに、若い血液を取り入れたときと比較して脳や肝臓、筋肉といった組織がそれと同等の”若返り効果”を示しました。

チームは同様の実験を若いマウスでも行いましたが、健康に悪影響を及ぼすことはなかったとのこと。

「ニュートラル血液」によって健康状態の改善が確認された後、研究チームは血液の中でタンパク質がどのように変化したかを分析するため、プロテオーム解析を実施しました。

その結果今回の「血漿交換プロセス」により、加齢とともに上昇した炎症性タンパク質の濃度を下げる一方で、血管形成を促進するタンパク質のような有益な物質を大量に生成させていることが判明しました。

これら一連の流れが”若返り効果”をもたらしたとのこと。

ヒトの治療にも有効か

血漿成分に含まれる病気の原因となる物質を取り除く治療法はすでにアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認されており、自己免疫疾患の治療に取り入れられています。

しかし、ヒトにおける血漿置換法の施行には2~3時間かかり、軽度の副作用が来る可能性があります。

研究チームは現在、高齢者を対象に血漿交換法を行い、糖尿病や免疫力の低下などの高齢に伴う疾患を治療するための臨床試験を実施する予定とのこと。

論文の共同執筆者であるコンボイ氏は「これらのタンパク質の中には特に興味を惹かれるものがいくつかあり、将来的には治療や薬剤の候補として検討することができるかもしれません。」と語っています。

参照:wired / カリフォルニア大学バークレー校