ネアンデルタール人のDNAを含んだ「ミニ脳」が作成される

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現在、IPS細胞(人工多能性幹細胞)が医療に革新を起こすのではないかと注目されています。

しかし、IPS細胞が作れるのは、なにもヒトの皮膚や心臓だけではありません。良質な未分化細胞さえ確保することができれば現代で絶滅した動物を作り出すことも理論上は可能です。

今回、研究チームはネアンデルタール人の遺伝子を含むように操作された「ミニチュアブレイン」を作り出すことに成功しました。

コーヒー豆ほどのサイズの脳は知的活動はおろか思考することも出来ませんが、この研究は人間とネアンデルタール人の認知やその他の違いを理解するのに役立つ可能性のあると研究者は語っています。

遺伝子を集めろ!

以外に思われるかもしれませんが、現代に生きるすべての人類はネアンデルタール人の遺伝子を持っています。

ネアンデルタール人のゲノム分析の結果、約55,000年前にヒトの祖先と交配したことが明らかとなっており、それによりヒトゲノムの約1%~4%がネアンデルタール人由来のものであるとされています。

このネアンデルタール人の遺伝子、実は特定することが出来ます。

持っている遺伝子は部位によって違うが集めれば再現することが可能。credit : Michael Dannemann.et.al.STEM CELL REPORT2020

保持している遺伝子は人によって違いますが、それらを分離させ、集積することでネアンデルタール人を復元させることが可能です。

チームが行った計算によると200人の個体を検査することでネアンデルタール人の遺伝子を20%回収できるとのこと。

これを受けてチームは、世界中の遺跡で発掘されたネアンデルタール人の骨からDNAを採取し、ヒトから抽出したネアンデルタール人のDNAを合わせることで絶滅した生物の遺伝子を復元することに成功しました。

四千年の時を超えて

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ゲノムと一括でいえど、その種類は膨大な数に上ります。

特定のタンパク質を作り出す遺伝子や細胞を破壊する遺伝子が生物には備わっており、それらは全て違う遺伝子です。

今回、チームは「ミニ脳」を作り出すにあたり、脳の発達に重要であることが知られている3つの遺伝子の違いに焦点を当てました。

チームはまず、ヒトのIPS細胞を用意し、ヒトの遺伝子を引き抜いて代わりにネアンデルタール人の遺伝子を埋め込みました。

こうして出来た幹細胞をニューロンへ分化するように誘導し、自発的に凝縮させることで「ミニ脳」を作り出したとのことです。

オルガノイド実験を監督したグレイ・キャンプ氏は「オルガノイドを9ヶ月間成長させ、何が起こるのか観察しました。人間の脳はまったく形成されていませんが、複数の領域が形成されているのがわかります。シナプスと電気的活動、および発達上の初期の違いを研究できます。」と語りました。

さらに、この実験は「ネアンデルタール人を現代に呼び起こす」ためではなく、「ネアンデルタール人の遺伝メカニズム」を明らかにするためのものであることをキャンプ氏は強調しています。

現代のヒトの祖先とネアンデルタール人は約40万年前に別々の道を歩み、ネアンデルタール人は絶滅しました。

なぜヒト祖先が生き残り、彼らが絶滅したのか。私達と彼らにどのような違いがあったのか。

今回作られた「ミニ脳」を用いた実験により、その要因が明らかとなるかもしれません。

この研究はSTEM CELL REPORTに掲載されました。

参照:Futurism / cnn