量子だけでなく電子でも「量子テレポーテーション」を行えることが判明

credit : ロチェスター大学,J.アダムフェンスター

「テレポーテーション」という言葉を聞くと物理学や量子物理学よりもSF作品を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

しかし、量子の世界で条件を整えることができれば「テレポーテーション」を行うことは夢物語ではありません。

これはいわゆる「量子テレポーション」と呼ばれているものですが、それを光子間で行えることが昨年の研究により実証されていました。

そして今回、新たな研究により量子よりも管理が容易な「電子」で量子テレポーテーションが行えることが判明しました。

SF?現実?量子テレポーテーションとは

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量子テレポーテーションとは、量子のもつれ(エンタングルメント)を利用して、物理的に接続されていない粒子がお互いに影響を及ぼし合うことで情報を超高速で伝達することを指します。

例えば、通常の信号を用いた手段では、経路に電気信号が行き交うことで情報を伝達しています。

しかし、量子には「一方の状況を観測すると同時にもう片方の状態が確定する」という性質を持っており、これを利用したのが「量子テレポーテーション」です。

つまり情報を伝達するのではなく瞬時に移しているというわけです。

なぜ電子なのか

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量子テレポーテーションは量子コンピュータが情報を送受信するための重要な技術です。

一般的なコンピュータはビットという最小情報単位を用いて計算を行っていますが、量子コンピュータは量子ビットと呼ばれる特別な最小情報単位を使用しています。

この違いを簡単に説明すると、ビットは「0または1」のどちらか構成されていますが、量子ビットは「0と1」の両方の状態を維持することが出来ます。

これにより情報を瞬時に送受信することが可能となっています。

以前の研究で、光子が物理的にリンクされていなくても、コンピュータチップ上の光子間で情報をやり取りできることは確認されていました。

しかし、それではまだ不十分です。量子コンピューティングの最終目的は量子テレポーテーションを電子で行うことだからです。

なぜなら、電子は安定性が高く、今日のコンピュータで使用されている既存のシリコンチップやその構成物質である半導体と非常に相性が良いため大規模なネットワークを構築できる可能性があるためです。

故に、その超強力な処理能力とハッキング保護が組み込まれた次世代のインターネットのための研究が日々行われています。

電子の交換相互作用。もつれる電子

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電子を用いた量子テレポーテーションを実証するために、チームはヴェルナー・ハイゼンベルグが発見した交換相互作用効果に基づいて開発された最新の技術を使用しました。

個々の電子は「+と-」または「上か下」を向いています。これは量子スピン(スピン角運動量)と呼ばれています。

電子は「特定の種類の粒子が同じ極の方向を向いている時、それらは互いに重なり合うことが出来ない」という性質を持っています。

チームはこの性質を利用して、電子のペアを分離させることで量子のもつれを作り出し、電子スピン状態を維持したままテレポーテーションさせることに成功しました。

量子のもつれと量子スピンを表した図。credit : Haifeng Qiao.et.al. nature communication.2020

電子が物理的な接触なしで遠く離れた地点で相互作用を起こすことが可能ならば、量子コンピュータに革命を起こすことが出来ます。

一方でより長い距離でのテレポーテーションは未だに大きなハードルとなっており、さらなる研究が必要となるでしょう。

この研究はnature communicationに掲載されました。

参照:ロチェスター大学