遺伝子組み換えにより、イカのような「色を変える能力」を持つヒト細胞が誕生

人間が透明になったり、周りの景色に溶けこむことによって人々から認識されなくなると言った発想は多くの一般市民と科学者を魅了してきました。

これらは透明になれるスーツを着用する、未知のエイリアンの技術、魔法などで仮想的に表現されてきました。しかし、自然に目を向けてみれば「人類の夢」とも言える機能を備えた生物は多く存在します。(イカとかタコとかですね)

Nature Communications』に掲載された研究は、イカの色素胞を合わせることでヒト細胞が透明になれる可能性を提示しており、人類が少しだけ彼らと親しくなれるかもしれないことを示しました。

イカが色を変えられる仕組み

イカは皮膚の色を任意のタイミングで瞬間的に変化させることが出来ます。

その要因の1つがロイコソーム、リフレクチンで構成されたロイコフォアと呼ばれる反射細胞です。この細胞はどんな色も反射することができ、光を当てる角度を変えても影響はありません。

さらに、リフレクチンなどのタンパク質の構成を変えることにより、光の反射の仕方を変えることが可能でこれにより周囲の色と溶け込み、見えなくなったかのような印象を捕食者に与えることが出来ます。

新しくデザインされたヒト細胞

研究チームは頭足類がユニークな方法で捕食者から逃げたことにインスピレーションを得て、イカのロイコフォアをヒトの細胞に組み込むことにより外部刺激に応じて光の透過率を変化させる能力を持つ細胞を設計することを考案しました。

この目的を達成すべく、研究者らはヒト胚性腎臓を培養してリフレクチンを発現させるように「遺伝子組み換え」を行いました。

この試みは成功し、得られた細胞を顕微鏡で観察したところ、イカとそっくりの光散乱能力を持っていることが判明しました。ヒトの細胞でも周りの景色に溶け込むことが可能だったのです。

さらに追加の研究によると、細胞周辺の塩化ナトリウム濃度を変えることでこの光散乱能力のONとOFFの切り替えが可能だそうで、塩化ナトリウム濃度が高いとより光を反射するようになり、周囲から目立つようになるとのことです。

credit : UCI news

応用可能性と問題点

目に見えない人間はまだSFの領域にいるがこの研究は将来、いくつかの具体的な利益をもたらすことができると研究チームは語っています。

だが問題がないわけではありません。イカの皮膚細胞を培養することが非常に困難であるため、これに変わる物質を見つけるか、新たな培養方法を編み出さなくてはなりません。

しかし、この問題を解決し医療などに応用することができれば新しいタイプの生体分子マーカーとして活用させることができるかもしれない。

この研究はNature Communicationsに掲載されました。

参照:iflscience / UCI news