中世の画家が使用していた青色、『フォリウム』を再現することに成功、しかも未知の化合物で構成されていた!?

科学者は中世の画家が愛用していたであろう青色染料を復活させることに成功しました。そして、その構造は既存の、どの天然青色着色剤とも異なっています。

credit:メロ他、ヘリテージサイエンス、2018 / Science Advance / nazorozi-

何世紀にもわたって染料は人類の文化に大きく関わってきました。聖書の装飾や色彩豊かな挿絵を彩るのに、自然に咲く花や植物から採取された『天然染料』は重宝され、いつしか欠かせない存在となっていきました。

しかし、科学製品によって『人工染料』が安価に、大量に製造されるようになると天然染料は次第に姿を消し、ついにはその製法すら不明になるものすら現れるようになりました。

はるか昔に絵画を美しく彩った青色である『フォリウム』もその例外ではありませんでした。この青は19世紀までに人々に忘れ去られ、その製法を知るものは誰ひとりとしていなくなってしまいました。

「これは、私たちが構造を持っていなかった、有機染料を基にした唯一の中世の色です」と、今回の研究の主導者の一人であるマリアジョアンメロはC&ENに語りました。

「後世のためにこれらの美しい色を保存したいので、中世の写本の照明の内容を知る必要があります。」

そこで、NOVAリスボン大学とポルト大学とアベイロ大学のグリーンケミストリー関連研究所(LAQV-REQUIMTE)の研究チームは失われた製法を取り戻すべく、15世紀に書かれたテキスト「イルミネーティングブック用のすべてのカラーペイントの作り方に関する本」から見つけ出そうと試みました。

しかし、書物は絶滅言語であるジュデオ・ポルトガル語(Judaeo-Portuguese)で書かれていたため翻訳に時間がかかりました。さらに現代の料理本のように正確に書かれていないため、その植物の特徴は判明しましたが、肝心の名称は不明のままでした。

研究チームは書物に書かれた数少ない手がかりである「その植物の見た目」と「どのような果実が実るか」を参考にして材料となった植物を特定することに成功しました。

興味深いことに、それは道端に生えているようなありふれた雑草であるChrozophora tinctoria(通称ダイアーズクロトン、またはギラソル)という植物でした。中世の人々は雑草の果実を材料として染料を作り出していたのです。

ダイアーズクロトンの果実 credit:Paula Nabais / NOVA University

「7月に果物をいつ収集するかを説明しています」と、NOVA大学リスボンの化学者ポーラ・ナバイスはC&ENに語りました。種子を壊さないように注意して果物を絞ってから、それらをリネンの上に置く必要があります。」

次に研究チームはその分子構造を解明しようとしました。化学構造を知ることでこの染料を科学製品として再現することやこの色を後世へ伝えることが可能となるためです。

メロ氏とその同僚は電子常磁性共鳴法(EPR)や質量分析、核磁気共鳴装置(MRI)などを含む一連の構造分析装置を用いてフォリウムがどのような分子構造になっているのか調査しました。

その結果、既存の青色着色料とは異なる、「クロゾフォリジン」という未知の分子が含まれていることが判明しました。

09815-scicon5-chrozo.jpg
credit:C&EN

この研究は、製法が失われた物体だとしても歴史的文献と現代の科学技術を組み合わせることで再現、復元が可能であることを示しています。

「結論として、クロゾフォリジンは、絵画の美しい青い染料を作るために古代に使用されました。それは、多くの青い花や果物に見られるアントシアニンでも、最も安定した天然の青い染料であるインディゴでもありません。」と研究者は論文に書きました。

「それは独自のクラスにあることが判明しました。したがって、これはこの驚くべき植物とその話に対する最後の言葉ではなく、さらなる発見が間もなく続くと私たちは信じています。」

この研究はScience Advancesに掲載されました。

参照:Sciencealert / nazorozi- / Science Advances / C&EN / アトラスオブスクラ / springerlink